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☆57号☆

シンプルイズベスト

2004年8月20日号   

私が今やっている農作業は、みかんの摘果(てっか)作業と木食い虫の駆除です。
摘果作業とは、多く受精した実を適量にするために手で落とし、みかんの品質を向上させるために行なう作業ですが、みかん以外の多くの農作物もそのような作業を必要とする場合があります。

摘果されたみかんの木の下は、まだ青い実が一面に撒き散らしたようになっています。放っておいても、自然に大地に戻っていくわけですが、それを有効に利用できないかと、地域の女性を中心に、みかんゼリーなどを作ったり、試行錯誤されているようです。

またこの時期は、みかんの木のもとに木食い虫が卵を産んで、それを放っておくと成木でも枯らされてしまう場合があります。特に苗木の場合、直ぐにやられてしまいます。木食い虫とは、一般に言うとカミキリムシのことです。

今年の春、温州みかんとデコポンとはるみの苗を120本定植したので用心していたのですが、やはり卵を産みつけられてしまいました。
幼虫が木の中に侵入しているものが何本もあり、1本1本手で幼虫を摘出しています。木の下に這いつくばって、結構窮屈で大変な作業ですが、成木も含めて全て確認していかなければなりません。

そんな光景を見て「スプラ撒いたらええねん」と何人もの農家の人に言われました。スプラとは、スプラサイトという殺虫剤のことです。このあたりの慣行農法の人たちは当たり前に使っている化学農薬です。
彼らは、我々が無農薬・有機栽培でやっているのを知っているのですが、「そんな手間なことやめて農薬撒いたら手っ取り早いでェ」といわんばかりです。
「しんどいわ」といって愛想笑いを返すだけです。


私は大阪にいる頃は虫が苦手でした。とくにゴキブリとクモが大の苦手でした。
しかし、こちらへ来てから、クモは益虫だと再確認したら急に愛しく思え、いつしか苦手意識が消えてしまいました。また、家にも外にもいたるところにクモはいるので、好き嫌いなどいっていられないのが現状でしょうか。

我々のみかん畑は、殺虫剤をしないためか、いろんな虫がたくさんいます。もちろんクモも巣をたくさん張り廻らせています。摘果をするために、枝を掻き分けるときクモの巣もつぶしてしまいます。そのたびにクモに「せっかく作った巣を壊して悪いなぁ」と思います。
その時「これが人間やったらどう思うやろう」とふと考えました。

クモにとって巣は住家、すなわち人間にとっては我が家に当たるわけです。私がクモの巣をつぶしてしまうのと同じように、我々人間が突然家を失ったらどうするでしょうか。

私が師と仰ぐ、陶芸家の帯谷宗英先生は10年程前に自宅が全焼した時に、燃え盛る炎の中、靴脱ぎ石の上に立ち、今日まで住まわせてもらったことに感謝されたそうです。私のような凡人には考えられないようなことです。ましてや先生のお住まいはたいへん立派なお家だったそうで、なんと東宮御所を建てた大工さんが造られたそうです。
しかし、幸いにも工房や離れや茶室は延焼を免れて、生活するのに支障もないため現在もそのままの状態でで生活をされています。

しかし、普通の人は立派で大きな家になればなるほど、そのような事態になったとき、オロオロしたり後悔したり誰かを恨んだりしてしまうのではないでしょうか。

私のような凡人には、クモの巣のような簡単なもののほうが心を惑わされずにいいように思われます。
Simple is Bestです。




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